イングランド紀行(4)
彼の名前はサミ(Sami)サウジアラビアから弟と二人でで来ていた。たぶん石油王の息子で大金持ちだったに違いないと思っている。
学校から紹介された賄付きのホストファミリーで一緒になった。もちろん部屋は別だったがキナード夫妻( Mr. and Mrs. Kinard)のお宅に2人、御厄介になっていた。夕食はいつも一緒で、食事が終わると決まって散歩に行こうと誘われた。自分の国でもその様な習慣だったのだと思う。優雅な生活をしていたんだろうと想像した。ある時彼は夕食を食べるのをやめた。ラマダンという、断食が始まった。夜になれば多少は食べてもいいと言っていたが、げっそりと痩せて、苦しそうだった。
キナード夫妻の写真。夕食の後クッキーを食べながら、ミルクティーを飲んでいるところ。とても美味しかった。日本に帰ってきてからは中々味わえないミルクティーだったけれど、数年前発見した日光金谷ホテルティーラウンジのローヤルミルクティーは絶品だと思った。
キナード夫妻の家は小さな清楚な家でよく手入れされたローズガーデンがあった。退職して2人で優雅に過ごしている感じであった。ローズガーデンは良く刈り込まれてきちっとした感じではなく、どちらかというと茂った感じだ。しかし土は乾いて乾燥している。こちらに来てはじめって知ったことだったが、イギリスの雨季は冬で、乾季は夏で日本とは反対だった。庭づくりも日本では湿気がたまらないように、風通しの良い作りにするが、こちらの庭は生い茂っていても乾いている。日本では雨水の処理に結構気を使う。今回設計・監理した博物館収蔵庫でもそうであった。元々設定されていた設計GLが低い位置であったが既存の建物と増設する収蔵庫の一階の床の高さをそろえることから、建物を上にあげることができなかった。前面道路よりも低くなっていて、敷地内の勾配もそれほど取れないことから、敷地内に水がたまらないようにすることにかなり神経を使った。気候・風土が人の生活や建築に根源的な影響を与えることに身をもって感じたことであった。